近所のイタリア惣菜屋

「美味いものを少しだけ食いたい」という時によく利用していた、近所のイタリア惣菜屋が腐ってきた。


例えば、私のお気に入りメニューのひとつに、「ブロッコリのスタミナサラダ」というものがあった。これは、小ぶりのブロッコリと炒めたにんにく、鷹の爪をオリーブオイルであえたものである。
簡単な食い物だが、ブロッコリを惜しげなく使っている点(ブロッコリは野菜にしては高い)、オリーブオイルをケチっていない点など、細かく贅沢な所が気に入っていたので、よく食っていた。
しかし、3ヶ月ぐらい前から、サラダにマカロニが少量混じるようになり、2ヶ月ぐらい前からマカロニがスパゲッティに代わり、1月ぐらい前には「ブロッコリのスタミナサラダ」か「ブロッコリのスパゲッティ」か分からないレベルになっていた。
先日店を覗いてみたところ、「ブロッコリのスタミナサラダ」と書かれた皿には、「みじん切りにしたブロッコリを上に載せたスパゲッティ」が盛ってあった。


開店当初、この店は「本物のイタリア料理を気軽に食べていただきたい」という標語を掲げていた。私は本物のイタリア料理なんて知らないが、この店の食い物は本物を名乗る資格があると思っていた。なぜならこの店の食い物が「高級な材料を使っているわけではないが、丁寧に、贅沢に作ってあった」からだ。
開店して半年、早くもこの店は当初の志を失い、どこにでもある看板だけの食い物屋になろうとしている。もういくことも無いだろう。悲しいなあ。