ノロケ者に与ふる書

そもそも何をもって「ノロケ」というかというと,周囲の人に向かって
「ボク達こんなにラブラブなんですよぅ!キャ☆」
ということをアピールする(又は無意識にしてしまう)行為のことをノロケというのだと思う.


で,昨日紹介したY君の日記は上記のノロケの定義は満たしている.
しかし私に言わせたらこれはまだまだ真のノロケではない.
このノロケは例えばハデにたくさん爆発したりするハリウッド映画のようなもので,飛び道具が過ぎる.
深い味わいがない.


ここで例えば友人Y(特徴:ノロケ者レベルは蕪村級)の日記を見てみる.

■[お料理]酒のつまみか
ちゃんと食べて帰ってきてしまったので、仕方なく嫁の分を作る。筍とこんにゃくが余っていたの豚肉を買ってきて炒めて煮てみた。
<中略>
ガンガン煮詰めて完成。ちょっとつまんでみたがちょっと濃い味でまさに酒のつまみ。あー。やばい。嫁がビール開ける確率高い。

この日記と前述のY君の日記を比較してみる.
まず第一に,友人Yの日記はノロケを目的としていない.
日記の内容は「今日はこんな料理を作りましたよ」というものである.
第二に,友人Yの日記は特別なイベント(Y君の日記でいうところの「目覚まし時計と嫁の頬を間違えた」)ではない.
あくまで日常生活である.
最後にこれが一番の特徴であるが,友人Yの日記内にはノロケの対象(らぶらぶ相手)となる人が出てこない.
対象との対話もない.
あるのは友人Yがご飯を作って「嗚呼,これは酒のつまみやな」というだけである.


しかし,友人Yのノロケのよく出来ているところは,日記の目的(「今日はこんな料理を作った」)と関係のないノロケの対象が最後に突然登場するのだ.
読者の目には「友人Yが味見をして『あー.やばい.嫁がビールを開ける確率が高い』といいながら『にや』とにやける顔」が浮かぶ.


この様に日常生活の記述に突然ノロケの対象を出現させることにより,読者に「『にや』という顔が思い浮か」ばせる点が,友人Yの日記を一流のノロケ日記とさせている.